+ + + 瞬誕 + + +

+ + 重陽 + +

陽を重ね、僕はまたひとつ、大人になる。

それは奇妙な夢だった。
誕生日の朝を迎え、僕はベッドの上に起き上がった。
「おはよう、瞬。」
そう言ったのは、黒髪の僕自身だった。
「ハーデス!」
驚く僕を尻目に、ハーデスの指が、僕のパジャマのボタンを外す。
「なっ、なにするんですか?!」
「今日は特別な日だからな。」
手を差し出せば、彼の従僕が、頭を下げながら、白い布を手渡す。
ここは城戸邸のはずだ。ベッドは僕の物。何故、沙織さんと辰巳じゃなくて、ハーデスとその側近が居るのだろう。
ぼんやりと、お門違いの事を考えているうちに、ハーデスは、僕の首筋を、肩を、背を、胸を、丹念に拭う。布は僅かに湿っていて、仄かに花の香りがした。・・・何の、花だったっけ?
僕の心にわいた疑問に、応えるかのように、ハーデスが口を開く。
「今日というこの日に、菊の花の露で身体を拭くと、老を捨てると言われている。」
それでは、この布は、昨日の内に、菊の花に被せておいたのか。
花の露に濡れた真白い布。僕にはそれが、とても贅沢なものに思えた。
僕のペンダントを、ハーデスが外した。代わりにとでも言うように、手にした茱萸の枝を、ハーデスは掲げた。
カワハジカミの赤い実が熟す。その一枝を僕の髪に挿し、ハーデスが黙って遠くを指差した。
そこへ行けと、暗に促しているのだ。
僕は、あんまり気乗りはしなかった。ハーデスなんかと、一緒にいるよりは、いいはずなのに。
一緒にいるのは、嫌?そんな事は、ない。そんな事はないのだ。むしろ・・・・。
だが、のろのろと思考しながらも、僕は彼の指示に従い、表へ出てしまった。屋敷の前で振り返る。
彼はついては来なかった。僕の部屋のバルコニーから、ただじっと僕を見ていた。
そして僕は、彼の示した丘に登る。
酒肴や、茶菓を手に。いつの間にか、星矢や紫龍や氷河や兄さんも一緒にいる。まるでピクニック気分だ。僕達は頂上で、邪気を払うという菊酒を飲んだ。
秋の夕暮れは早い。陽の落ちきらぬうちにと、急いで家に帰ると、沙織さんも、使用人も、誰一人として見当たらない。なのに僕は勝手に、彼らもまた、ピクニックに出掛けたのだろうと、確信している。
部屋に戻ると、そこには。
・・・僕が死んでいた。
黒い髪には、赤い実は無かった。
「我は失せ、陽九の厄は払われた。」
キロリと死体の目が僕を見て言った。それきり閉じた瞳は、二度と開く事はなかった。
「・・・陽九の厄。」
僕はそっと繰り返した。それは本来、世界の終末を意味するのだと、誰が教えてくれたのだったか。
けれども僕は、そんなことを望んではいなかったのに。
どうして貴方は、そんなに勝手に、僕の前から姿を消してしまったのだろう。
僕達は確かに、重なる陽であったはずなのに。
貴方だけが、闇に溶けてしまった。
僕は一人、陽の中で笑う。
貴方の居ない、この世界で。
――― 平和に笑う。
目覚めた僕の鼻腔に、一瞬、ハジカミが香った気がした。

二度とは重ならぬ陽の代わりに、夜を重ね。
僕はまたひとつ、大人になる。



=END=

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□都合のイイ、作者のいい訳;□





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